1999年初演情報

'99年10月22日、藤掛先生の新作オペラが岐阜市民会館で発表されました。

満員の客席に心揺さぶる感動と涙をのこし、無事閉幕。

 

新作全3幕2時間半のオペラ

紙すきのうた

藤掛 廣幸=作曲・指揮/オーケストラ=藤掛廣幸Solo*Orchestra

 1999年10月22日(金) 国民文化祭 in 岐阜 前夜祭

岐阜市民会館大ホール
#1時30分〜/#6時30分〜  2回公演

前売り3000円(当日3500円)小中高生学生1500円(当日2000円)
お問い合わせ:岐阜市民会館  [058-262-8111]
              岐阜市文化センター[058-262-6200]

総制作費数千万、大規模なステージセット、美しいメロディーに溢れた
とても感動的なオペラです。
マンドリン関係の皆さん!藤掛作品のルーツがここに凝縮されています!
是非お見逃しのないように!

*********************************************************************

吹く風に秋の気配が感じられるようになりました。
作曲家藤掛廣幸は、この秋に岐阜県で行われます国民文化祭で、
新作の音楽劇「紙すきのうた」(2時間半のオペラ)を初演することになりました。
今までのいわゆるオペラとは違い、現代の最新技術と人間の声や動きとの融合を図った新しいスタイルの舞台作品ですが、難解ではなく多くの人達に素晴しい感動をお届け出来るものと自負しております。

このスタイルでの新しいオペラは作曲、編曲、演奏、指揮を全て作曲者本人が担当、これが第三作目になります。

第一作は、1998年3月に日本と中国との初めての合同制作オペラとして初演され、日本と中国双方に絶大な感動の涙を呼んだ「太陽をさがして」

第二作目の「かかみ野の空」は、人気を聞いて駆けつけたもののホールに入り切れない人が続出し、感動的な舞台は「太陽をさがして」と共にダイジェスト版が再演されました。

そして「紙すきのうた」が第三作目という事になります。

オーケストラは、素晴しくダイナミックな音空間を描き出す事が出来る「藤掛廣幸ソロオーケストラ」です。
今までにないスタイルの新しいオペラを是非体験して頂きたくここにご案内させて頂きます。


****あらすじ*****************************************************************

岐阜の伝統産業「美濃紙」は、1300年の歴史を、持つといわれ、手すき紙は、
そのほとんどが、女性によってすかれてきた。
宝暦騒動がおわった明治元年の春。両親を亡くした元郡上藩士の娘「ゆき」は、
長良川沿いの険しい峠を超え、紙すきの里、長瀬村武本家の養女となる。
様々な人々に助けられ、下男であった「弥助」との純愛を秘めながら、
紙すきとして、生涯をささげた娘「ゆき」が、美しい「典具帖紙」を
すき上げるまでを感動的に描く。

*******************************************************************************
スタッフ
   原 作.................................................角田茉瑳子
   作曲.指揮.......................................藤掛廣幸
   演 奏.................................................藤掛廣幸ソロオーケストラ
   台本.演出.......................................松岡直太郎
   演出協力........................................田村 貫
   演出協力........................................藤間金扇
   歌唱指導........................................中島富蔵
   音楽監督.合唱指導.................井戸清輔
   児童合唱指導.............................矢島倫子
   装置プラン.....................................森サチコ
   照明プラン.....................................坪内浩美
   音 響.................................................古宇田玲
   舞台監督........................................富田茂雄
   舞台協力........................................舞台工房アクト
   演出助手........................................篠崎幸子.奥野 葉
   衣装.かつら...................................松竹衣装(株)
   練習ピアノ......................................田口育代.篠田亜紀.青木由美子
キャスト
   ゆき(郡上藩士の娘/武本家の養女)..........篠田弘美
   弥助(元下男/武本家の作男)..........................井上博嗣
   彦四郎(美濃の紙商人.小森家の主)...............田村 貫
   源三郎(武本家の跡取り) ......................................中島富蔵
   つね(武本家の女) .....................................................沢田裕子
   かよ(源三郎の娘).......................................................金山晴香.谷口優香
   とね(典具帖紙を教えた郡上の女) ..................古田真寿美
   ちえ(石徹白から来た少女)....................................小島 睦
   仙太(小森の奉公人) ...............................................吉田金治
   村の男.勘助 ................................................................島 源三
   村の男.常吉 ...............................................................青木 茂
   混声合唱 .....................................................................公募による男女70人
   児童合唱 .....................................................................公募による男女16人

総勢100人を越すスタッフ、キャストと大規模なセットによる上演は、この機会を逃すと
なかなかお目に掛かれませんのでお近くの方は是非お出かけ下さい。
   藤掛廣幸

(藤掛先生より頂いたメールより/1999.10.3成瀬記)


 

「紙すきのうた」に寄せて 投稿者:なるなる 1999.10.23

岐阜市民会館に一歩踏み入れると、そこは熱気に包まれた世界。
取り敢えずかぶりつきを確保して、ロビーで新聞記事の切り抜きに目を通しながら開演を待つ。
舞台には圧倒されてしまうような巨大な美濃和紙で出来た緞帳。
開演のブザーとともにいやがおうでも緊張が高まっていく。
keikotosensei.jpg (23370 バイト) そこに颯爽と藤掛先生が登場。
少し静寂を待って、最初の一振り。
シンセサイザーと共に、人々が「紙すきのうた」を歌い始める。
会場内には藤掛ワールドが広がっていく。
そこはもう江戸時代の「紙すきの村」。
女性たちが来る日も来る日も紙を漉き続ける「紙すきの村」。
主人公ゆきと弥助がどのようないきさつで紙すきに関るようになっていったかが展開されていく。
藤掛先生らしい優しいメロディーが私達の心に染み渡っていく。
シンセサイザーと肉声のバランスの良さには本当に驚かされた。
音楽と歌が溶け合っていくような感じさえする。
武家の娘でありながら厳しい紙すきの仕事に携わることになったゆきの可憐な姿に次第に私達も魅了されていく。
そして、市井の人々の明るい暮らしぶりをユーモラスに描く藤掛先生は、音楽が「日々の暮らしの中に存在している」ことを良くご存知なのだと思う。
藤掛先生の厳しい横顔を盗み見しながら舞台からも目が離せない。
冷静に鑑賞しようと決意して臨んだのに段々心が熱くなっていく。
ゆきたちが典具帖紙への想いを募らせながら幕間に入る。
呼吸を整えながら、二幕へ臨む。
ゆきと弥助、ちえと仙太の二組の恋が二重奏のように絡み合っていく。
突然、襲い来る自然の猛威の中、ゆきは透かし模様の紙を作り出す。
人間と自然の厳しい戦いの中で、人間はそれを受け入れるしかない。
そして、ちえの死・・・・・・。
いつか嵐は去り、深い悲しみを残したまま現実の生活は続いていく。
優しい中にも、激しく厳しいものを内包する先生の側面を見る。
逆説的に言えば、自然或いは人生の厳しさを知り尽くしているからこそ優しくなれるのではないだろうか。
舞台は次第にクライマックスへと盛り上がっていく。

三幕に入り、成長したゆきと弥助の抑え切れない恋心が切ない。
弥助のソロには不覚にも涙してしまう。
しかし運命が無情にも二人を引き裂き、雪の婚礼の日、ゆきのためにノリウツギの木を取りにいった弥助は死ぬ。
ゆきの絶叫は、一生忘れることができないほどインパクトがあった。
会場の全てのものが一つになった瞬間であった。
きっと生でしか味わえない、本当に悲しいけれど至福の時でもあった。
時は流れ、やがて完成した典具帖紙をゆきは弥助の墓前に捧げる。
悪意無く二人を引き裂くことになってしまった姑の善意が涙を誘う。
そして典具帖紙を掌にのせて「こんなに軽いのに弥助さんの温かさを感じる」というゆきの言葉。
肉体は滅んでも、魂は決して滅びることはない!!!
一生懸命生きれば、魂は受け継がれていくものだと言う感動が全身に広がっていった。
これは、決して妥協することなく最高の音楽を追求し続ける先生からの熱いメッセージ。
「確かに受け取りました」と大声で叫びたいような気持ちだった。

「岐阜では技術の上手下手を越えた熱意が伝わってくる。その熱意と感動こそが
音楽の原点だと思う」とおっしゃる先生の言葉をかみしめる。

社会人になって・・・年目。学生時代にはあんなに熱い想いで頑張っていたマンドリン音楽も少し懐かしい思い出になり始めていた昨今、運命のお導きから藤掛先生と関わりを持たせて頂くようになり、「紙すきのうた」を見に来ました。
社会人になると音楽に接する機会も自分で余程意識しないと少なくなり、どちらかと言うと「パンのみに生きる生活」でも平気になりがちです。
特にオペラはクラッシックだと気楽に行ける金額ではなく、正直言って敷居が高いです。
今年は幸いにして「オペラ座の怪人」「マダムバタフライ」等、オペラと触れるチャンスがあり、どちらも堪能しましたが、どうしても少し構える部分があります。
今回のオペラは岐阜市民の方々の熱気をひしひしと感じました。
岐阜の歴史が題材となっている為か、すごく身近に楽しんでいる様子でした。
日本語であることも大きく影響していると思います。
「日常生活の中に音楽を」しかも「感動を目的とした音楽を」という藤掛先生の熱意が見事に結実した演奏会と言えるのではないでしょうか。
「顔も環境も違う人々の思いが結集されることで、感動が何倍にもなる」ことを身をもって感じました。
音楽万歳!

心豊かなる時間を下さった藤掛先生、とっても感謝しています。

(写真は終演後、先生とのツーショット/1999.10.22成瀬撮影   ※先生より写真の掲載許可を頂いております)


kamisukisukoa.jpg (19728 バイト)

上の写真は当日ステージ前で指揮をされた先生の特設席



戻る